啼き女
啼き女(な-き-おんな)は明け方の
外町を徘徊する喪服姿の中年女性。彼女はいつも
仏花の敷き詰められた大きな紙袋を携えて、誰も悼むことの無い死、死する定めを予
見された
奇異國の犠牲者の為に手を合わせる。驚くべきことに
喰也上人との面識は無い。
「南無南無南無南ムナ無ナムキィクゥゥゥニチョッ、チョオオオウ」
死者への献花を済ませた彼女は、慰霊のために独自解釈に基づくニューウェーブ供養を慣行とする。彼女は身に降り注ぐ宗教的悦楽の命ずるままに亜麻の髪振り乱し枯れ枝の如き四肢をしならせ、色褪せたトンボ玉を繋いだ数珠を手繰りながらただ一心に念仏を囀(さえず)る。その音形は耳にする人々に戦慄を及ぼし、非情なる奇異國への畏敬を呼び起こす。
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最終更新:2012年10月27日 20:35