主婦連


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主婦連


主婦連(しゅふ-れん)とは曖昧団地の備える情報伝達回路としての役割を担う「平凡な」主婦達の総称。団地内の各ご家庭の仔細な裏事情に一歩も二歩も三歩も踏み込んで垣根を踏み越えた明晰明快な持論を展開する老獪な評論家たちであり、道を尋ねる者に豊富な目印とゴシップを併せた詳しい案内をする親切な一面も持ち合わせる。

「ねえねえ聞いた?出稼ぎのブラジル人と駆け落ちした向井さんとこの娘さんと付き合ってる介護疲れでお父さんが倒れた薬局の、学校で酷いいじめにあって最近公園でブラブラしてる、かわいそうよねえ、あ、そのトシオ君なんだけどさあ、実は。」
彼女たちの口から飛び出す変幻自在の「実は」に根も葉も勿論実も無い事は明白自明の理だが、殊奇異國に於いてうそのような、ほんとうの話は一周回って「まことしやかなまこと」だ。彼女らの隣の家の昨日の晩御飯に関する口角泡を飛ばす喧々諤々の討議の末に、無味乾燥な団地にじっとりとした見事なグルーヴ感が形成されるのである。

「佐藤さんとこ、昨日お婆様が亡くなって。さっそく団地葬なさるんですって!」
「まあ、お目出度い!」
自由でのどかな団地暮らしにあって、待ち受ける受難を暗示させる生を受け砂を噛むような辛苦を乗り越えて身過ぎ世過ぎの果ての大往生は天晴れ団地妻の本懐。町会から派遣された弔(とむらい)師が遺体から腸(わた)抜き防腐を施した後、御霊(みたま)宿りし亡骸(なきがら)はご近所様方々の協力のもと屋上に備えられた祭壇で天日に干され、皆伏して『ご本尊』たるを待つのである。人は死しても世に想いを残すもの。干乾び朽ちるその間(ま)に筋引き攣れて骸(むくろ)の面(おもて)の変わること、そのめまぐるしさ正に百面相の如し。恨み憎しみ妬(ねた)みに嫉(そね)み、弔師の決死の供養に依りて万業(ばんごう)拭い去られし七日目に骸の面持ち菩薩に至って遺族の涙零(こぼ)れて是ぞ団地の本願成就、団地葬の終(つい)である。真有り難きご本尊は丁寧に真空パック、しっかと封印され終の住処、押入れへと安置される。町会からは敬意を表して月々の歳金(ねんきん)が振舞われ、これぞ功徳と団地の嫁たるもの成仏したる姑(しゅうとめ)に朝な夕なの礼を欠かす事無し。

「ねえね、この黒いお塩、家の前に盛っとくとほんとにいいのよ!」
「あらまあ、ほんと。じゃあ私も、灰谷さんに頼んでみようかしら。」
団地住まいの鉄扉、その脇にはつるりとした丸皿に盛られた三寸ばかりの黒い山。主婦達の間で流行る、ちょっとしたおまじない云うやつだ。「活性炭配合のマイナスイオンパワーが貴女の心苦を見事に解消。無病息災家内安全亭主健全本願成就。」眉唾(まゆつば)覚悟の神頼み、口コミの力恐るべし。皿を縁取るように絵付けされた柄は三種類。連なる星、ヤコブ十字に菊花紋。○△×。×○○○△○。



















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