唖烏


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唖烏

【人物】【歯車】

唖烏(おし-がらす)は夢煙草を生業とするスキンヘッドの小男。紺のモッズスーツが下品に似合う。

「ようこそ線のこちら側、破滅を欲望する人々の住まう処へ。」

鳴かず飛ばずの唖烏。真鍮のスキットルから琥珀の液体を口吸いしてひび割れた唇を湿すと、盲いた小人は濁った眼で新たな客を品定めする。彼が見定めるのは客の背負った影の色。俯き歩くその輪郭は時に青く、かと思えば赤く、白(しろ)黄(き)橙(だいだい)とオーロラに揺らめく。街路に腰掛けて道行く人の心の裡を万華鏡代わりに鑑賞するその時が、彼には無上の悦びである。影の黒を縁取る淡き色合いを、小人はエロースと名付ける。渇いて赤く、倦(う)んで青く。喜びて黄に内省の後に白に。また変幻するエロースを纏う芯軸、濃淡ある闇を彼は格調高くタナトスと呼び習わす。「生きたい。」その偽りの願いに包み隠された「死にたい」。人の思いつく限りの希望が辿り着く限りの絶望に墜ちてエロースとタナトスがただ黒一色に染まったその折に、格子模様の鳥打帽を目深に被った彼は客人となり果てた人々の前に現れて懐から取り出した一片の煙草を押し渡す。

「ウヒャヒャヒャヒャ。走馬灯は、人生最大の娯楽であるよ。」

夢煙草の甘く辛い煙は混迷窮(きわ)まりし客の胸にみちみちて鼓動高まり視界はひずみ脚はわななき、回転木馬でエロースとタナトスぐるりと廻る。死にたいは生きたい、生きたいは死にたい。自意識の奈落へと落ちる永劫に似た一瞬、脊髄駆け抜ける最大にして極上の快楽、五体砕ける至高の破戒。その身に宿すは真正の滅び。死を希求する遊歩者と化した客の、混じりあったマーブルなる影を見据えて唖烏は満足げに独りごちる。

「死ぬときは潔く、そうだろう、兄弟?」










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