帯域フィルタのデジタル化

微積演算のデジタル化

前節で「加算」「乗算」「遅延」を考えましたが、ここでは微分積分演算のデジタル化を考えます。
結論から言ってしまうと、微分は「関数の値の差をTで割ったもの」、積分は「関数の値の和にTを掛けたもの」といえ、式はそれぞれ下の(1)(2)のようになります。
どうしてそうなるかは以下に。

アナログ世界の微分演算は念のため定義式を書くと
 f'(t)=\lim_{\Delta t\rightarrow 0} \frac{f(t+\Delta t)-f(t)}{\delta t}
のようになりました。デジタルの世界でこの演算を「厳密に」計算することは不可能です。なぜなら時間領域が連続ではないので、\Delta tが無限に0に近づけられないからです。

\Delta t \rightarrow 0(つまり、アナログ世界において最も細かい時間軸の細断)が不可能だということなので、デジタル世界では(仕方なく)デジタル世界での最も細かい細断をします。
それがサンプリング間隔Tです。
 f'(t)\simeq \frac{f[k]-f[k-1]}{T} \cdots(1)
分母は「時間の差」、分子は「関数の値の差」ですので、微分はこのように書けます。

積分については区分求積法の考え方から明らかに以下のようになります。
 \int f(t) dt\simeq T \sum_k^{n-1} f[k] \cdots(2)
短冊一つ一つのヨコの長さがT、タテの長さがf[k]になるからです。
シグマの頭の「n-1」は、『今サンプリングしている点を含めず、それより前をすべて足し合わせる』という意味です。
直感的に言えば積分は『過去』だけを考えていますから、今現在のサンプリングは含めない、というような感じのイメージです。

ローパスフィルタのデジタル化

ローパスフィルタの典型例は以下のようなRC回路ですね。この回路が従う微分方程式は以下のようになりました。
 CR\frac{dy(t)}{dt}+y(t)=x(t)
この式を式(1)を使ってデジタル世界に持ってきますと
 CR\frac{y[k]-y[k-1]}{T}=-y[k]+x[k]

ハイパスフィルタのデジタル化

回路図は省略しますが上の回路のコンデンサと抵抗が逆転しただけでハイパスフィルタを実現できます。
その回路方程式は
 x(t)=y(t)+\frac{1}{CR}\int^t y(t)dt
これを式(2)を使ってデジタル化すると
 x[k]=y[k]+\frac{T}{CR}\sum_{i=0}^{k-1} y(t)dt
となります。ここでkk-1と置くと
 x[k-1]=y[k-1]+\frac{T}{CR}\sum_{i=0}^{k-2} y(t)dt
なるので、この式を上の式から引いてやると
 x[k]-x[k-1]=y[k]-y[k-1]+\frac{T}{CR}y[k-1]
という差分方程式が導かれます。微積分を深くやっているなら、上の計算は微積分学の基本定理のやっていることとちょうど対応付けられていることが分かるかもしれません。


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最終更新:2012年10月16日 17:38
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