科学忍者隊ガッチャマンの第1話


ガッチャマン

タートル・キング




雷雨の夜。
海から巨大なカメ型の機械の怪物が現れ、街の上空を飛んで行く。


とあるウラン貯蔵庫。

「こちら、監視塔。豪雨で視界が良くありませんが、今のところ異常ありません」

監視塔の窓を覗き込む、カメの怪物。

「わぁっ! か、怪獣!?」

怪獣ロボットの放つレーザーで、監視塔が跡形もなく溶ける。
貯蔵庫を狙う怪獣ロボットに対し、警備隊が出動する。

「怪獣ロボットはウラン貯蔵庫を狙っているぞ! 砲撃開始!」

怪獣ロボットは警備隊の攻撃をものともせず、ウランを盗み出し、空へ飛び去って行く。

「ウラン泥棒め……!」


怪獣ロボットの出現は、
世界を恐怖のどん底へ叩き込んだ。
国際科学技術庁の会議室に、
各国の代表が招集された。

国際科学技術庁、アンダーソン長官と、各国の代表者たちによる会議。

アンダーソン「我々はあらゆる科学力を集め、無公害エネルギーの開発を急いでいる。しかし、世界平和のために利用されるウランが、怪獣ロボットに盗まれてしまった! これは、世界平和を願う我々の仕事を妨害する者の仕業に違いない」
出席者「アンダーソン長官。それで、その一味の正体は?」
アンダーソン「残念だが、優秀な情報部員でも正体をつかむことは不可能なのだ」
一同「怪獣ロボットは、また必ずやって来るぞ」「このまま放っておくわけにはいかん。何とか手を打たなくては」
アンダーソン「しかし、現在ではまったくその正体が……」
声「わかっている!」

科学技術庁日本支部長、南部孝三郎博士。

アンダーソン「南部博士。わかっている、とは?」
南部「『ギャラクター一味』です」
一同「ギャ、ギャラクター?」「ギャラクター?」
南部「そうです。私の調査では、恐るべき科学力を持ち、世界制服を狙う一団です」
アンダーソン「なるほど。で、南部博士。そのギャラクターの本部はどこに?」
南部「それはまだ不明です。こちらから密かに、探り出さねばなりません」
出席者「しかし、優秀な情報部員でも不可能だったのだ。探り出す者などいないだろう?」
南部「いる!」
アンダーソン「それは、誰だ?」
南部「それは、あるときは5つ、あるときは1つ、実体を見せずに忍び寄る白い影…… その名を、科学忍者隊!」


荒野の上空を駆けるセスナ。
操縦者は主人公、大鷲の健。

健「こちら、ガッチャマン。どうぞ!」
南部『こちら、南部だ。今、北上しつつある怪しい飛行物体をレーダーで捉えた』
健「えっ? 博士。それは、例の怪獣ロボット?」
南部『うむ、間違いないとみている。G1号ギャザー! ゴッドフェニックス発進せよ!』
健「ラジャー! バード・ゴ──ッ!」


健のブレスレットが光るや、一瞬にして、鳥の意匠をもつバードスタイルに変身する。
同時に彼の乗っていたセスナ機も、ジェット戦闘機・G1号へと姿を変える。

大鷲の健、科学忍者隊G1号。
またの名をガッチャマン!

地上を駆けるスーパーバイク・G3号には、科学忍者隊紅一点のジュン。

白鳥のジュン、科学忍者隊G3号。

海中から浮上するホバー輸送機・G5号を駆るのは、巨漢の竜。

みみずくの竜、科学忍者隊G5号。
科学忍者隊は、世界制服を狙う
ギャラクターの野望を打ち砕くため、
南部博士が作り出した、
正義の少年忍者のチームである。
彼らの目的は、
南部博士が開発した数々のマシンを利用して、
博士の指令により、
ギャラクターの世界各国に散らばっている
秘密基地を探り出し、本部を突き止めることだ。

G5号内にG3号が収容され、続いて最年少・甚平(じんぺい)の乗る万能バギーのG4号が収容される。

&ruby(つばくろ){燕}の甚平、科学忍者隊G4号。

さらに日系イタリア人メンバーのジョーの乗る戦闘レースカー、G2号が収容される。

コンドルのジョー、科学忍者隊G2号。

最後に、健の乗るG1号がドッキングし、大型偵察攻撃機・ゴッドフェニックスが完成する。

こうして、
ガッチャマンを始めとする科学忍者隊は、
G1号からG5号までの
メカニックの合体を完了した。

健たちのもとに、南部博士からの通信が入る。

南部『怪獣ロボットらしい飛行物体はレーダーから消えた。しかし、相手はギャラクターだ。油断はできんぞ』
甚平「ガラクタなんて名前からして、あんまり強そうじゃないな」
ジュン「ガラクタじゃないの、ギャラクターっていうの」
南部『怪獣ロボットは、暴れ回るカメだ。一般市民もかなり殺されている』
ジョー「許せねぇな。カメのバケモノだって? 発見したらバードミサイルをブチ込んでやるぞ!」
南部『いかん! 科学忍者隊の任務は、戦うことばかりではない。ギャラクターの本部を捜す出すことだ。ジョー、早まるんじゃない!』
ジョー「……」
南部『ガッチャマン。君は科学忍者隊のリーダーなのだ。任務を忘れて命令を破ることのないよう、十分気をつけて行動してほしい』
健「はい!」
南部『科学忍者隊の諸君、成功を祈る』

ゴッドフェニックスが空を行き、偵察を続ける。

ジュン「出て来ないのかしら?」
健「出て来るさ、必ず」
ジュン「本当は健だって、怪獣ロボットと格好良く戦いたいんでしょ?」
健「ジュン。そりゃ俺だって、一発…… バ、馬鹿!」
竜「おい。あれ、何だ?」

眼下は海。水面が渦を巻いている。

甚平「海とカメか。クサイぞ」
健「竜、潜航だ」
竜「ラジャー!」

ゴッドフェニックスが潜水。海底には洞窟が地中へと続いている。

甚平「こりゃ、カメの化け物が通った道に違いないや」
ジュン「そうね」


地上では、ロケット基地に怪獣ロボットが出現する。
ロケットが次々に破壊され、基地が炎に包まれる。
ただちにゴッドフェニックスが海の調査を打ち切り、急行する。

甚平「ひぇぇ、すげぇ! カメの怪物だ!」
ジョー「くそぉ、いい気になって暴れてやがる! もう見ちゃいられねぇや。竜、接近させろ!」
健「待てっ! 命令を破るのか、ジョー!?」
ジョー「時と場合によるぜ。いいか、あいつの体の中へ潜り込んで、息の根を止めてやるんだ!」
健「我々の任務は怪獣ロボットを監視し、ギャラクターの本部を捜しだすことだ。竜、発見されないうちに遠くへ離れるんだ」
ジョー「俺は賛成できねぇな。健、怖気づいたのか?」
健「何っ!?」

怪獣ロボットが宙を舞い、空へ飛び立つ。

ジュン「健! 怪獣ロボットが、街のほうへ飛び立ったわ」
甚平「大変だ! 今度は街が全滅だ!」
ジュン「罪のない人たちに犠牲者が出るわ」
竜「おいら、もう、悔しくって泣けてくるわ」
甚平「俺だって泣きたいよ……」
ジュン「健、どうするの?」
ジョー「健。もう、お前の指図は受けねぇぜ。バードミサイルを撃ち込んでやるんだ!」
健「待て!」
ジョー「邪魔するな、こいつ!」
健「竜、すぐそばまで接近させろ」
ジョー「健…… さすがだぜ」
健「早まるなよ、ジョー。あいつの目を叩き潰すだけだ」
ジョー「俺はそれで十分さ」
健「よし。まず2人の者が、気づかれないように怪獣ロボットの空気口から、潜り込むんだ」
甚平「へへっ、待ってました! この仕事には伊賀流忍者18代目、この燕の甚平様を……」
健「連れて行かん。盗まれたウランを奪い返すんだ。命がけの仕事だぞ。1人は、俺が行く」
ジョー「もう1人は、俺だ」
ジュン「ちょっと待った! 危険物を処理するのは私の役目。もう1人は私よ。ジョー、お気の毒様ね」
甚平「本当は、健と一緒に仲良く行きたいんだろ、お姉ちゃん?」
ジュン「こらっ!」

健とジュンの2人が、機外に立つ。

健「行くぞ、ジュン。バード・フライ!」

2人が鳥のごとく宙を舞い、怪獣ロボットに取りつき、内部に侵入する。
たちまち、ギャラクター隊員たちと鉢合せする。

敵隊員「誰だ!?」

健たちが一瞬の内に、隊員たちを仕留め、気絶させる。

健「ジュン、気をつけて行け。死ぬときは一緒だぞ」
ジュン「任しといて。健、あなたも気をつけてね!」

二手に別れ、健はウランを捜索するが、一向に見つからない。

健 (ウランが腹の中にないとすると、一体どこに?)

怪獣ロボットを操縦する敵司令官。
目の前を、ゴッドフェニックスが旋回する。

敵司令官「小癪な小僧どもだ。見ていろ。今度こそはトドメを刺してやるわい! フフフ、百発百中の赤い光が、地獄へと案内してくれるぞ!」

ジュンは怪獣ロボット内部の機械に、細工を施している。
レーザー発射ボタンが押されるが、レーザーは発射されず、ジュンの細工した箇所が爆発を起こす。

敵司令官「むっ、レーザー光線が故障だ! 調べろ!」

健の操作で、怪獣ロボットの胴のハッチを開く。

甚平「成功だ!」
竜「突っ込むぞい!」

ゴッドフェニックスが内部へ突入。ジョーたち3人が降り立ち、健とジュンも合流する。

健「怪獣ロボットの中には、ウランはない」
竜「ちぇっ。ムダ骨を折らせおって」
健「ジュンが目的を果たしたんだ。さぁ、面倒が起らないうちに引き揚げよう」
甚平「でも、何だか物足りねぇなぁ……」
声「フッフッフッフ……!」

敵司令官と数十人のギャラクター隊員たちが登場。
銃を持って健たちを取り囲む。

健「し、しまった! 遅かったか!」
甚平「へへっ、どうやら俺の出番が来たようだぜ!」
ジョー「……健。これじゃ、命令を破らないわけにはいかなくなったぜ」
健「そのようだな」
敵司令官「ギャラクターが誇る怪獣ロボット、タートル・キングに忍び込む命知らずの小僧たちめ! 皆殺しにする前に、名前だけは聞いてやろうか」
健「あるときは5つ、あるときは1つ」

ジョーと竜の上に、健とジュンが立ち、その上に甚平が立つ。

健「実体を見せずに忍び寄る白い影!」
甚平「正義の影武者、科学忍者隊!」
司令「何っ!?」
健「その名を、ガッチャマン!!」
司令「ガッチャマン……?」
甚平「忍法、竜巻ファイタ──っ!!」

5人が一体となって大回転。
まさしく一同が竜巻となり、隊員たちを吹き飛ばす。

敵隊員「うわぁぁ!」「撃て、撃てぇっ!」

健たちが散開し、体術やそれぞれの武器を駆使し、次々に隊員たちを蹴散らしてゆく。
敵司令官は慌てて操縦室へ戻り、首領のベルク・カッツェに通信をとる。

カッツェ『失敗したな?』
敵司令官「ははっ、ベルク・カッツェ様。何卒、この対策を……」
カッツェ『待て。総裁の指示を受けよう』

ギャラクター本部基地。
スクリーンに映る異形の影、ギャラクター支配者・総裁X。

カッツェ「総裁。タートル・キングの不始末を、いかに処置いたしましょうか?」
総裁X「ベルク・カッツェよ。科学忍者隊はギャラクターにとって、最も恐るべき敵となろう」
カッツェ「最も恐るべき敵?」
総裁X「小僧と思って侮るな。科学忍者隊が全滅しない限り、ギャラクターの世界が来る日は望めない」
カッツェ「ははっ! タート・ルキングを爆破させ、科学忍者隊を一挙に全滅させましょう!」

怪獣ロボット = タートル・キングの首が胴から分離し、宙を舞う。

健「首が離れたぞ。ゴッドフェニックスを発進させろ。追うんだ!」

敵司令官「フフフ、科学忍者隊め。地獄へ行けぇ!」

ギャラクターは、怪獣の胴体もろとも
科学忍者隊を全滅させようと、
時限爆破装置のボタンを押した。
危うし、ガッチャマン!

機能停止したタートル・キングが、みるみる空を落ちていく。
健たちはゴッドフェニックスに乗り、脱出を図る。
だがゴッドフェニックスが飛び立つ寸前、タートル・キングのハッチが閉まり、ゴッドフェニックスの翼が挟まってしまう。

健「しまった! 科学忍法、火の鳥!」
一同「えぇっ!?」
ジョー「健! それを使えば、俺たちは……」
健「わかっている。かなりの重圧に耐えなければならないし、ゴッドフェニックスはバラバラに空中分解するかもしれない。しかし、ほかにどういう方法がある? このままいけば、このカメのバケモノと一緒に、科学忍者隊は全滅してしまうぞ!」
一同「……」
ジョー「……よし、やってみようぜ。科学忍法、火の鳥!」

ゴッドフェニックスが、バーナーを全開に吹かす。

健「よし、行くぞ! ジェネレーターをレッドゾーンまでアップ!」

凄まじい重圧が、操縦室内の健たちを襲う。

タートル・キングが大爆発。もうもうと黒煙が立ち上る。無数の残骸が海へと落ちて行く。

敵司令官「フフフ、フフフフフ! ……むっ!? な、何だ、あれは!?」

立ち昇る爆炎の中から、火の鳥と化したゴッドフェニックスが飛び立ち、宙を舞う。



タートル・キングと共に落下した
ゴッドフェニックスは、
火の鳥となって天高く舞い上がった。
生死をかけた、科学忍法・火の鳥。
そして、ガッチャマンの運命は?
がんばれ、ガッチャマン!



(続く)

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最終更新:2014年07月10日 03:22