喰いタンの最終回

高野「何ィ打ち切り!!?」
「唐突にどういう訳だ!?前回までそういう気配は全くなかったぞ!!人気もあったはずなのにいったい何故だ!あっまだ切るな!!寺田コラ!!」
「絶望したッ、過去これだけ貢献してきた作家をいとも簡単に切り捨てるとはっ、講談社の冷たい仕打ちに絶望したッ」
京子「いや・・・講談社にもいろいろ事情があるんだと思いますよ・・・・」
高野「切ないなぁ。世間の冷たい風が身に沁みる時は無性に人の情けにすがりたくなるなあ」


File113 最後の最後まで喰いまくる!!

高野「緒方君僕は悔しいよッ、一緒に飯食って僕の悔しい思いをじっくり聞いてくれないかっ。もちろん君の奢りでッ」
緒方「すみませんッ、今から覚醒剤取締法違反の容疑で暴力団の事務所に家宅捜索かけるので、そのお誘いは是非またッ」
高野「何だ君はッ、僕よりヤクザが好きなのかっ」
緒方「好きとか嫌いとかそういうお話ではなく都市の安寧を守るため我々警視庁はなすべきことをするまでですッ」
「これまで何度か暴力団事務所を捜索しましたが情報が漏れてすべて成果なしに終わってるんです。今日こそは警察の威信にかけても覚醒剤を発見しなくてはいけないのですッ」
高野「オーイ無視すんなー」


松本組長「ガハハッ、情報はもう事前にみんなこちらに流れて来てんだ」
「警察がいくら事務所の中を探し回っても、もう一週間も前にヤクは安全な場所に隠してあるんだから何ひとつ出てきやしねえよ」
「ただ一点・・・・おまえら万が一にもヤクを打ってはいないだろうなぁ。尿検査で反応が出てきた時はブツがなくてもしょっぴかれるぞ!!」
幹部1「当たり前ですよ。操作のあることは前から知ってるんですからそれにヤクをやる馬鹿はいませんや」
松本「そうか・・・それならいいが・・・油断してドジ踏むんじゃねぇぞ!!」
一番後ろに立っていた肥満体の男、西裕二(にし ゆうじ)が居眠りしていた。
松本「コラァ聞いてんのかデブ!!」
西「ハ・・・ハイ!!す・・・すみません!!つい腹が減ってボーッとしちゃって・・・・」
松本「ヤクザ者がボーッとしてただとォ・・・随分うすらみっともない生きモン飼ってるな!?オオ?」
幹部2「申しわけありません親父っさん・・・!!全然昇進できずに廃業した相撲取りなんですが力はあるんで何かの役に立つかと・・・・」
松本「フン・・・・!!どんなのでも構やしえが行儀ぐらいは躾けとけ!!」
組員「すみません・・・・!!」

幹部1「いいかあ!?ぐれぐれもドジ踏むんじゃねえぞォ!!」
組員たち「「「オスッ」」」
幹部2「ホレ!!片づけものぐらい気を利かせてやっとけ!!」

西が茶の片づけをしている脇で、3人の組員が話をしていた。
組員たち「そんで・・・ヤクはどこに隠してあるんだ!?」
「ホラ・・・この前潰れちまった文房具屋の倉庫に・・・」
「あーあ!!あそこなら安心だわ!!」
「オ・・・!?何を立ち聞きしてやがんだ!!」
「殺すぞデブ!!」

警官「開けろ!!警察だ!!」
組員「へ・・・!!何も知らねえでのこのこやってきやがったぜ・・・!!」
刑事「広域指定暴力団、講談会系伊武忍組!!覚醒剤取締法違反容疑により家宅捜索を行う!!!」

警察による家宅捜索が始まった。
刑事「屋根裏を探せ!!床下にも隠し扉があるかも知れん!!どんな小さなスキ間も見逃すな!!便所を探してみろ!!水洗のタンクの中に隠しているかもしれないぞ!!机の中の中の隠し引き出しやソファーの中も見逃すな!!」
組員「く・・・・くくく」
「くくく・・・・!!」

刑事「で・・・出ませんね・・・・このまま本当に出なかったらこの度重なる失態・・・・相当まずいことになりますよ」
?「出ました!!」
刑事「何ッ出たか!!」
高野「高野聖也出ました――ッ。いやぁ緒方の行く先を聞いたら前から行きたかったすごい旨味の焼き肉屋の上でさ。それで緒方の仕事が終わるまで焼き肉喰って待っててそれからどかへ繰り出そうって寸法!」
店員「出前お待たせしましたー」「お待たせしましたー」
高野「ささっ皆さんご一緒に旨味な焼き肉をいただきましょーー!!」
刑事「あ・・・・あ・・・あの人はいったい・・・・?」
高野「ハイハイ、どんどん持って来て」
緒方「いいからさっさと覚醒剤を探しましょう!」

高野「アレーーー?みんな食べないの?こんなに旨味な焼き肉なのに勿体ないなー」
幹部1「あいつはいったい何なんですか!?」
松本「け・・・警察の仕掛けたワナかも知れん・・・!!無暗に手を出すんじゃねぇぞ・・・・!!」
高野「あーー・・・・そこの君ィ!!一人じゃ寂しいからこっちで一緒に食べようよ!!」
西「え・・・・・あ・・・・いや・・・あのそういうわけには・・・・」
高野「何を言ってんだい、料理が冷めちゃうよ。ホラホラ、こんなに旨そうなお肉がいっぱいあるんだよー」
西「・・・・へへへ・・・それじゃ遠慮なく・・・!!」
幹部1「な・・・何をやってんだあの野郎・・・!!」
松本「け・・・警察がいるんだ。うかつなことはすなよォ~~~!!」

西「いやあ旨い!!こりゃ旨い肉っスね!!」
京子「七輪が3つって・・・」
高野「ハッハッハッ、足りなかったら追加注文するからどんどん食べてくれたまえ」
「焼き肉もうまいがここのキムチもまた絶品なんだ。まあ食べてくれたまえ」
西「ハイ旨い!!すごく旨い!!ごっつあんです!!」
高野「焼き肉のみやたさん?あと上カルビにロースにハラミにミノにホルモンにキムチ10人前ずつ追加よろしく!!」
西「ああ・・・!!こんなに腹いっぱい食べるのは久しぶりだなあ・・・・!!」
高野「食べるものもろくに食べさせてもらってないのかい・・・・?さっきから見てると酷い扱いを受けているようだが何でこんなとこにいるんだい・・・?」
西「自分・・・相撲部屋を追い出されて今更おめおめと故郷にも帰れないし・・・ほかに何の取り柄もないし・・・行く所もどこにもないんス・・・・オレがとろいからみんなに厳しくされちゃうけどいざって時がきっとオレのこと守ってくれると思うから・・・」
高野「ふうん・・・そうか」

刑事「ダメです警部・・・!!出ません・・・!!」
松本「オイオイ、いつまでやるつもりなんだ?さっさとしてくれないとこっちも仕事があるんだぜ?」
緒方「全員の尿検査を実施する!!覚醒剤の陽性反応が出た者は警察に出頭してもらうぞ!!」
幹部2「ヘヘヘ・・・いよいよ手詰まりになってきたようですね」
幹部1「いいか・・・!!大人しく言うことを聞いておくんだぞ」
組員「ヘイヘイ、このコップに小便を入れりゃいいんですね?」
「おいデブ!!お前もだ!!来い!!」
西「ハ・・・ハイ!!」

鑑識「出ません・・・!!これも!!これも反応なしです」
緒方「ダメか・・・!!」
鑑識「!、出ました!!!明らかなよう正反応です!!!」
幹部1「な・・・・・」
松本「なにィ!!!?」
鑑識「西裕二・・・28歳!!」
西「え・・・・?ええ・・・・!!!い・・・いや知らない!!オレは覚醒剤なんてやってないです!!」
刑事「残念だったな、伊武忍組組長、松下陵!!今から警察でたっぷり話をしてもらうぞ!!」
松下「・・・・!!ハハハ・・・・何を言ってるいるんです刑事さん・・・・!!」
「あいつはうちに勝手に出入りしとるただのチンピラですよ。盃を下しているわけでもなんでもない全然関係のない人間なんだよ。こいつが覚醒剤をやったってんならこいつ一人をどうぞ引っ張っていって下さいよ」
西「お・・・親父さんそんな・・・!!た・・・助けて下さいよォッ」
松下「うるせえぞこの野郎・・・!!あれほど言ったのに下手ァ打ちやがって警察に釈放された後手足の2・3本はへし折ってやるから覚悟しろよ・・・!!」
高野「やっぱりね・・・この親分を見てるとそんな気がしてたんだ。自分たちが助かるためなら君のことも平気で切り捨てる連中なのさ」
西「オレは覚醒剤なんかやってないよォ!!!覚醒剤を売ったり買ったりしてんのはこの人たちだ!!!嘘じゃないです刑事さん!!潰れた文房具屋の倉庫に隠したってオレはっきりと聞きました!!!」
刑事「や・・・やった!!これでこいつら全員を締めあげることができるぞ!!」
京子「ど・・・どういうことなんですか先生!?彼は本当に覚醒剤をやっていたんですか?」
高野「覚醒剤の尿検査ではメタンフェタミンという成分を検出するが、ある食べ物を多雨量に食べることによって同じ物質が検出されることがあるんだ。それがキムチなんだ」
京子「ええ・・・!?キムチ!!?」
高野「キムチを食べると尿に微量ながらメタンフェタミンが出るというレポートがあるんだ。だからこいつらをはめるために彼に大量のキムチを食べさせたのさ」
「君には迷惑をかけてしまったな」
西「じゃ・・・じゃあオレは無罪なんですね!?もうヤクザもやめよ」
緒方「先輩・・・それじゃ最初から捜査に協力してくれるために焼き肉を・・・僕のために・・・・」
高野「よかったな。これからも都民の安寧を守るために活躍を頼むぞ緒方!!」


京子「珍しいですねえ、先生が頼まれもしないのに緒方さんを助けてあげるなんて・・・」
高野「置き土産さ」
京子「置き土産・・・・?」
高野「しばらくアルゼンチンに渡るつもりなんだ」
京子「え・・・・?」
高野「講談社の仕事がこれでひと段落ついたからね、前からやってみたかった恐竜化石の発掘物語を書いてみたいんだ、長い間恐竜の化石は北米かヨーロッパでしか発掘されなかったけど、アルゼンチンでは南半球独自の恐竜が近年続々と発見されてるんだ。その発掘にかける学者の生涯の物語を緻密な取材を元に何年もかけて書きあげるつもりなんだ。一度向こうに渡ってしまえば、もう何年も帰ってこれないかもしれないからなあ」
京子「そ・・・・そうなんですか・・・・」
高野「うん、まあそういうことだ」
京子「身体・・・・気をつけて下さいね・・・・」
高野「何言ってんだい。君も来るんだぞ」
京子「・・・・・え!?」
高野「僕を一人で放っておいたら何をするかわからないぞ!!いろんな人に迷惑をかけるのが心配じゃないのか!?」
京子「何言ってんですかもう・・・!!そんな脅かし聞いたことないですよ!!」
「もちろんついて行きますよ!!だって私、先生の秘書なんですもん!!」



人が居なくなった高野の家を、可奈が掃除していた。
可奈(あれから3カ月・・・主のいなくなった高野先生のお家を私は週に一度お掃除をしに通っている。ううん・・・!!ボランティアじゃなくてお金は貰ってるよ。白木さんに高野さんがお願いしてきったらしいの。白木さんのお店にも高野さんは来なくなって、当たり前のことなんだけど随分静かになっちゃた・・・あんなに騒がしくて馬鹿ばっかりやって・・・でも何でいなくなるとこんなに寂しんだろう・・・私は・・・本当は・・・・)
そこへ、今まで高野が関わってきた人たちが押し掛けてきた。
清原「ちょっ・・・ちょっと高野先生が外国へ行っちまったって本当かい!?冗談じゃないよ!!日本を出る前にしこたま喰ってこんなにツケを残していきやがったんだぜ!!」
小栗「うちにもこんなに請求書が届いたぞ!!」
寺田「うちにもです」
可奈「アハハハッ」
清原「な・・・何だよ!!笑いごとじゃないぜ可奈ちゃん!!何がおかしいんだよ!?」
可奈「だって、それはきっと高野さんが帰って来るつもりだからです」
(ねっ・・・・そうだよね高野さん!!)




喰いタン/終わり

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最終更新:2017年03月26日 00:06