L meets R


「また落ちてしまった。もう何度目だろうか」
「そう落ち込むな。こうしてまたひとつ成長したと思えばいい」
「受かった奴に言われると頭にくるが、確かにその通りだな。精進する。」
「その意気だ。いつか競演できる日が来ると信じているよ」
「あぁ。そういえば今回のCVではKTを回していたな。君にしては珍しい」
「あのKTには色々と思い入れがあってな、このペンでCVに出たいと思っていたわけだ」
「そういえば君はKTを持っていなかったよな、よく僕の所に借りに来ていた。あのKTはどうしたんだ?」
「そうか、お前にはまだ話していなかったな。実はあのKTには面白い経歴があるんだ」
「なかなか興味深いな、聞かせてほしい」
「昔、あるオフ会で素晴らしいペンを持ってきたスピナーがいてな、俺はそのペンに一目惚れをしてしまったんだ」
「よくある話だな」
「そうかもな。で、どうしても欲しくて持ち主と会話をしてみたら、最近どうもKTが欲しくてたまらないのだという。そこで俺は交渉をし、自分のKTとそのペンを交換してもらったんだ」
「KTを交換に出すなんてよっぽど回しやすかったんだな。もうだいぶ希少なのに」
「まあ昔の話だからな。それでまあ俺は満足していたわけなんだが、いつだか風の噂で交換したKTの所在がわからなくなっていると聞いたんだ」
「所在がわからない?」
「つまり、そのスピナーもKTに飽きたのだろう。交換に出したらしい。そうするとその後も何回も交換に出され、スピナーの間を回りに回って今は誰の手元にあるのかわからないという話だ」
「そのKT、確かに壮絶な人生を歩んでいるな。いや、ペン生か」
「話はまだ終わらないぞ。なんとそのKTなんだが、この前参加したオフ会で偶然見つけたんだ。持ち主にそのことを話していたら、快く私に渡してくれたのだ」
「なるほど、最近いきなり借りに来なくなったと思ったらそんなことがあったのか」
「昔はそんなに思い入れがなかったんだがな。今回の一件で愛着がわいてしまった。CVに出れて嬉しかったし、きっともう手放すことはないだろう」
「愛着か。僕は暦が浅いからまだあまりペンに愛着はないかもしれない」
「そんなことはないだろう。お前はもう五年近く続けているんじゃないか?」
「確かにそうだったかもしれない。時間は案外早く過ぎていくものだな」
「そんなものさ。俺だって昔は暦十年だなんて遠い遠い先の話だと思っていたのに、今じゃもう十五年目だ」
「君はそんなに長く続けていたのか。どうりでうまいわけだ」
「今でこそ当たり前のようになっているがな、昔はこの非対称ペン専門店だって開店してなかったんだ」
「そうなのか。てっきり何年も前からずっと続く老舗だと思っていた」
「あの頃は大変だったな。有志でスピナーを集めて開店の準備に明け暮れていた。俺も中心メンバーではなかったけどだいぶ手を回したよ」
「僕の初めてのペンはここのRSVPだったから、今こうしてペン回しを続けていられるのも君のおかげと言っても過言ではないな」
「それもそうかもな。でもあの時はすぐにKTに浮気をしてたような」
「当時はまだ回しやすさがわからなかったんだ。久しぶりに触ってみたらとても回しやすかったよ。ペン回しに慣れて感覚がおかしくなったのかもしれないけどね」
「でもその割にはお前はいつもKTで動画撮影をするよな」
「RSVPは手癖で回すのが僕なりの楽しみ方なんだ。コレクションにも最適だし、最高のペンだと思っている」
「なるほどな、そういうのもアリかもしれない」
ダラダラとした雑談が一段落ついた所で突然奥から声が掛かった。
「シフトお願いしまーす」

私は適当に返事を返してから両手のペンをケースに戻し、CVを流していたプレイヤーを閉じて仕事に向かった。
最終更新:2013年11月18日 03:09