線形時不変システム

差分方程式からインパルス応答へ

今まで入力から出力を発生させる仕組みはすべて差分方程式で記述してきました。
つまり、差分方程式さえあれば、そのシステムに何を入れたら何が出てくるかということが完全に決まることになります。

さて、では差分方程式が分からないようなシステムを考えて、その中にある入力を入れて見ます。例えば
 x[1]=2\ x[2]=5\ x[3]=3\ x[4]=9\ x[5]=1\ x[k]=0 (k<0, k>5)
というような入力を入れてみたところ
 y[1]=2\ y[2]=9\ y[3]=13\ y[4]=15\ y[5]=19\ y[6]=2\
というような出力が出てきました。

…この入出力だけ見てそのシステムがどんなシステムなのか分かるでしょうか?
勘のいい方は分かるかもしれませんが、
 y[k]=2x[k-1]+x[k]
というのがこのシステムの差分方程式です。
こんな単純な差分方程式でもこれだけ特定が難しいのですから、これが何項にも渡る差分方程式だったら手におえないですね。

しかし、ある条件の付いたシステムにおいては
 x[1]=1
という入力(離散時間におけるインパルス信号)に対する応答(インパルス応答)が分かるだけで、そのシステムがどんなシステムなのか分かってしまうのです。

線形性

もう微積分をやってきた方ならおなじみだと思われる線形性です。
これがまずインパルス応答で書き下せる、というために必要なシステムの条件の一つです。

入力と出力を関係づける関数の関数(作用素)を\phiで定義しておけば、線形性は次のように書けます。
 x[n]=\sum_k a_k x_k[n] \rightarrow y[n]=\phi[x[n]]=\sum_k a_k\phi[x_k[n]]

時不変性

もう一つ必要な条件は時不変性です。

これも簡単です。『入力が1秒遅れたら、出力も1秒遅れた関数として出てくる』というだけの事です。
一応定義を正確に書いておきます。
 y[n-k]=\phi[x[n-k]]

離散たたみこみ表現

以上二つの性質を持ち合わせているようなシステムのことをそのまんま線形時不変システムと言います。
じゃあこのようなシステムだと何が嬉しいのでしょうか。

まず、インパルス応答が分かっていたとします。つまりこれは「n=1の時間に1という信号が入った時の応答」ですね。
ここで時不変性を使いますと、「n=2,3,4,5…の時間に1という信号が入った時の応答」が分かります。
例えばn=2ならば「1コ遅れた」インパルス応答が、n=3ならば「2コ遅れた」インパルス応答が出力されるはずです。

さて、あとは線形性です。
ディジタル信号はいわば、「インパルス信号の時間軸平行移動の集合」を重みづけして足し合わせただけのものですから。

つまり数式で言えば
 y[n]=\sum_{k=-\infty}^\infty x(k)h(n-k)\cdots(1)
となります。

この式の意味を手続き的に言います。インパルス応答がh(n)だと決まったとして
x[0]=2y_0[n]=2h(n)
x[1]=5y_1[n]=5h(n-1)
x[2]=3y_2[n]=3h(n-2)

x[k]=9y_k[k]=9h(n-k)
と計算して
 y_0[n]+y_1[n]+y_2[n]+y_3[n]+\cdots
と足し合わせたものが出力だと言っているわけです。
つまり、「入力」と「インパルス応答」が分かってしまえば、その出力が分かると言っているわけですから
言いかえせば「インパルス応答がそのシステムを完全に記述している」という見方が出来ます。

ここで、式(1)のような表現方法を離散たたみこみ表現といいます。

離散たたみこみ定理

証明はしませんが実は式(1)を満たす時、次のような定理が成り立ちます。
 Y(z)=H(z)X(z)
ただし、Y(z)は出力のz変換、X(z)は入力のz変換で、H(z)はインパルス応答のz変換です。

なんともすごいことに、インパルス応答が伝達関数そのものになっています。
これでより明確に、「インパルス応答がシステムを完全に記述している」という意味が分かるかと思います。

なにも差分方程式で一々成分を計算しなくても、(線形時不変ならば)インパルス応答をラプラス変換すればいいだけの話ということです。

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最終更新:2012年10月20日 20:37
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